LETメールマガジン第17号 2006年5月10日 (外国語教育メディア学会)

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★リレートーク           No.17 境 一三              (関東支部)

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 私はドイツ語教師ですが、英語教育にはいつも大きな関心を寄せています。中学一年の英語の時間に感じた、未知のものに触れるというあの興奮が胸を去らないからでしょう。2002年の研究休暇では、とうとうドイツ・エッセン大学英語英文科に籍を置くという、暴挙まで犯してしまいました。と言っても、第一の目的はリュショッフ教授(EUROCALL前会長)の下でCALL研究をすることでしたが、折角の機会なので、授業にも参加してドイツの英語教員養成をつぶさに見ようと思ったのです。ドイツ人やトルコ人ばかりでなく、エラスムス計画によって留学しているロシア人やポーランド人も混じる教室は、一人の人間が状況により言語を切り替えながら生きるという、ヨーロッパの複言語的状況を反映して、実に興味深いものでした。 

 CALL研究の博士課程にも世界各国から学生が集まり、議論もある時はドイツ語、次の瞬間は英語とめまぐるしく変わり、一瞬たりとも気が抜けませんでした。それどころか、突然誰かがフランス語で冗談を言い始めるという、フランス語万年初心者の私にはとても厳しい世界でした。しかし、この体験は私に『ヨーロッパ共通参照枠』の目指している複言語・複文化世界を、そして私たちにとっての近未来をごく自然に見せてくれたように思われました。

 翻って、私は日本の英語教育界に息苦しさを感じます。なぜ英語教員は中国語や韓国語やインドネシア語を話そうとしないのでしょう。なぜもっと英語以外の言語とその教育について語らないのでしょう。東アジアでも早晩英語だけでは立ち行かなくなることは目に見えているのではないでしょうか。英語の先生方、もっと色々な言葉を楽しみませんか?